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子どもが会社を継がない場合の選択肢 ー 中小企業オーナーが考えるべき事業承継戦略

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「会社は子どもが継ぐもの」――かつてはそう考える経営者が多くいました。しかし近年は、子どもが別のキャリアを選んでいたり、経営の責任の重さから継承を望まなかったりするケースも増えています。実際、中小企業の事業承継では親族外承継やM&Aなど、親族以外へ引き継ぐ方法も一般的になりつつあります。大切なのは「子どもが継がない=会社の終わり」と考えるのではなく、自社に合った承継の形を早めに検討することです。

本コラムでは、子どもが会社を継がない場合に考えられる主な選択肢と、事業承継を進める際のポイントについて解説します。

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この記事の目次

「子どもが会社を継がない」ケースは珍しくない

かつて中小企業では、「会社は子どもが継ぐもの」という考え方が一般的でした。創業者や二代目が築いた会社を、三代目、四代目へと親族が引き継いでいく――それが自然な流れとされてきたのです。しかし現在では、この前提が大きく変わりつつあります。

少子化や働き方の多様化、職業選択の自由などの影響により、子どもが必ずしも親の会社を継ぐとは限らなくなりました。むしろ「子どもが会社を継がない」というケースは、今や珍しいものではありません。

中小企業の事業承継で増えている“親族外承継”

近年の事業承継の大きな特徴として挙げられるのが、「親族外承継」の増加です。これは文字通り、親族以外の人物に会社を引き継ぐ方法です。

たとえば、長年会社を支えてきた役員や従業員に経営を任せるケースや、第三者企業に会社を譲渡するM&Aなどが代表的です。以前はM&Aと聞くと「大企業の話」というイメージを持たれることも多くありましたが、近年では中小企業の事業承継手段として広く活用されるようになっています。

国の調査でも、親族内承継の割合は年々減少しており、親族外承継や第三者承継の割合が増加していることが分かっています。つまり、子どもが会社を継がないこと自体は、決して特別な状況ではないのです。

子どもが継がない主な理由

子どもが会社を継がない理由はさまざまです。たとえば次のようなケースが多く見られます。

一つは、子どもがすでに別のキャリアを築いている場合です。都市部で会社員として働いていたり、専門職としてキャリアを積んでいたりする場合、地元に戻って会社を継ぐことが難しいケースも少なくありません。
また、経営の責任の重さを理由に継承を望まないケースもあります。会社経営には従業員や取引先、金融機関など多くの関係者が関わるため、プレッシャーを感じる人も多いのが現実です。

さらに、親自身が「子どもには別の人生を歩んでほしい」と考え、継承を望まないケースもあります。

「継がない=失敗」ではない理由

重要なのは、「子どもが会社を継がない=事業承継の失敗」と考える必要はないという点です。会社を次世代に残す方法は、親族内承継だけではありません。

むしろ近年では、会社の将来や従業員の雇用を守るために、あえて親族外承継を選ぶ経営者も増えています。大切なのは、「誰が継ぐか」という一点だけにこだわるのではなく、会社をどのような形で次の世代へ引き継ぐかを考えることです。

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子どもが会社を継がない場合の主な5つの選択肢

子どもが会社を継がない場合、「会社をどうするべきか分からない」と悩む経営者は少なくありません。しかし実際には、事業承継にはさまざまな方法があり、親族以外へ引き継ぐ選択肢も広がっています。重要なのは、自社の状況や将来の方向性を踏まえながら、最適な方法を検討することです。
ここでは、子どもが会社を継がない場合に考えられる主な5つの選択肢について解説します。

① 社内の役員・従業員に承継する(従業員承継)

まず一つ目の方法が、社内の役員や従業員に会社を引き継ぐ「従業員承継」です。長年会社に関わってきた役員や幹部社員が後継者となるケースで、近年では比較的多く見られる事業承継の形の一つです。

この方法の大きなメリットは、会社の事業内容や企業文化をよく理解している人物が経営を担うため、事業の継続性が保たれやすい点にあります。従業員や取引先からの信頼も得やすく、比較的スムーズに経営を引き継ぐことができる場合が多いでしょう。

一方で、後継者となる人物が株式を取得するための資金を用意する必要があるなど、実務面での課題が生じることもあります。また、経営経験が十分でない場合には、引き継ぎ期間を設けて段階的に経営を任せていくことも重要になります。

② 第三者へ会社を譲渡する(M&A)

二つ目の選択肢が、第三者企業へ会社を譲渡するM&Aです。後継者がいない企業が別の企業に事業を引き継いでもらう方法で、近年は中小企業の事業承継手段として広く活用されています。

M&Aのメリットは、会社の事業や従業員の雇用を守りながら承継できる可能性がある点です。また、株式を譲渡することで、経営者自身が一定の資金を得られるケースもあります。

さらに、買い手企業との相乗効果によって事業が拡大する可能性もあり、会社にとって新たな成長の機会になることもあります。ただし、企業価値の評価や契約条件の調整など専門的な手続きが必要になるため、専門家のサポートを受けながら進めることが一般的です。

③ 共同経営者や取引先に承継する

三つ目の方法は、共同経営者や長年の取引先に会社を引き継ぐケースです。すでに事業をよく理解している人物や企業に承継するため、信頼関係をベースにした承継ができる点が特徴です。

たとえば、長年一緒に経営を支えてきた役員が株式を取得して経営を引き継ぐケースや、主要な取引先企業が事業を引き受けるケースなどがあります。特に取引先が同じ業界で事業を展開している場合、既存の事業との相乗効果が期待できることもあります。

このような承継は、外部の第三者に売却する場合と比べて話がまとまりやすいこともありますが、株式の評価や条件面については慎重に整理する必要があります。

④ 外部経営者を招聘する

四つ目の選択肢として、外部から経営者を招くという方法もあります。これは、株式の所有者は変えずに、経営だけを外部の専門家に任せる形です。いわゆる「プロ経営者」を登用するケースといえるでしょう。

この方法は、会社を残したいものの社内に後継者がいない場合などに検討されることがあります。外部の経営人材が入ることで、新しい視点や経営手法が取り入れられる可能性もあります。

ただし、企業文化との相性や、既存の従業員との関係性などに配慮する必要があります。また、株式の所有と経営の役割をどのように分けるかといった点についても、事前に整理しておくことが重要です。

⑤ 計画的に廃業する

最後の選択肢が、計画的な廃業です。事業の将来性や市場環境、会社の財務状況などを総合的に判断した結果、承継ではなく事業を整理することが合理的な場合もあります。

ただし、廃業は突然行うものではなく、従業員や取引先への影響を考慮しながら計画的に進めることが重要です。たとえば、従業員の再就職支援を行ったり、取引先への引き継ぎを行ったりするなど、一定の準備期間を設けることが望ましいでしょう。

また、会社を清算する際には税務や法務の手続きも必要になるため、専門家と相談しながら進めることが大切です。

このように、子どもが会社を継がない場合でも、事業承継の方法は決して一つではありません。会社の状況や経営者の意向によって最適な選択肢は異なるため、早い段階から複数の可能性を検討しておくことが重要です。適切な準備を進めることで、会社の未来をより良い形で次の世代へつなげることができるでしょう。

多くの経営者が見落とす「事業承継の3つの準備」

事業承継というと、「後継者を誰にするか」という点ばかりに注目が集まりがちです。しかし実際の現場では、後継者が決まっていても承継がスムーズに進まないケースが少なくありません。その理由の多くは、会社の体制や財務、株式の状況など、事前に整理しておくべきポイントが十分に整っていないことにあります。

事業承継は、単に社長の椅子を引き継ぐだけではなく、会社の経営基盤そのものを次の世代へ移すプロセスです。そのため、後継者の問題だけでなく、会社全体の準備を進めておくことが非常に重要になります。
ここでは、多くの経営者が見落としがちな事業承継の3つの準備について解説します。

株式の整理

事業承継において最も重要なテーマの一つが「株式」です。中小企業の場合、会社の株式は創業者やその親族が保有しているケースが多く見られます。しかし長い年月の中で相続が繰り返されると、株式が親族の間で分散してしまうことがあります。

株式が分散すると、会社の意思決定に支障が出る可能性があります。たとえば重要な経営判断を行う際に株主の同意が必要になり、意見がまとまらないと意思決定が進まないという事態も起こり得ます。また、株式を保有している親族が会社経営に関与していない場合、経営と所有が分離してしまい、将来的なトラブルにつながるケースもあります。

そのため、事業承継を見据えて株式の状況を整理しておくことが重要です。誰がどの程度株式を保有しているのかを把握し、必要に応じて株式の集約や移転を検討することで、承継後の経営を安定させることができます。

会社の財務体質の改善

事業承継を円滑に進めるためには、会社の財務状況を整えておくことも欠かせません。特に中小企業では、長年の経営の中でさまざまな財務課題が積み重なっているケースがあります。

たとえば、経営者個人が会社の借入の保証人になっている場合や、役員貸付金が多額に残っている場合などは、承継の際に大きな課題になることがあります。また、収益性の低い事業を抱えている場合、後継者にとって経営の負担が大きくなる可能性もあります。
さらに、第三者への承継やM&Aを検討する場合には、会社の財務状況が企業価値の評価に直接影響します。財務内容が整理されている会社ほど評価が高くなりやすく、承継の選択肢も広がります。

そのため、事業承継を見据えた段階で財務状況を見直し、不要な資産や負債の整理、収益構造の改善などを進めておくことが重要です。こうした取り組みは、会社の経営基盤を強化することにもつながります。

経営理念・ビジョンの整理

事業承継では、株式や財務といった数字だけでなく、「会社の考え方」や「経営の方向性」をどのように引き継ぐかも重要なポイントになります。会社がどのような理念のもとに事業を行ってきたのか、今後どのような方向を目指していくのかを整理しておくことは、後継者にとって大きな指針になります。

中小企業では、経営者の頭の中にある考えや判断基準が会社の経営に大きく影響していることが多くあります。しかし、それらが言語化されていない場合、後継者が会社の方針を理解するまでに時間がかかってしまうことがあります。

そこで重要になるのが、経営理念やビジョンを明確にし、会社として共有できる形にしておくことです。会社が大切にしてきた価値観や強みを整理することで、後継者だけでなく従業員にとっても会社の方向性が分かりやすくなります。

事業承継は単なる役職の引き継ぎではなく、会社の文化や価値観を次の世代へつなぐプロセスでもあります。理念やビジョンを整理しておくことは、会社の未来を支える重要な準備といえるでしょう。

このように、事業承継には後継者の問題以外にも多くの準備が必要です。株式、財務、経営方針といった基盤を整えておくことで、承継はよりスムーズに進みます。早い段階からこれらのポイントを見直しておくことが、会社の未来を守ることにつながるのです。

子どもが継がない場合でも会社を残す方法

子どもが会社を継がないと聞くと、「会社は自分の代で終わりかもしれない」と感じる経営者も少なくありません。しかし実際には、親族が承継しなくても会社を存続させる方法はいくつもあります。むしろ近年は、親族以外の人材や企業へ事業を引き継ぐケースが増えており、「会社をどう残すか」という視点で承継を考えることが重要になっています。
ここでは、子どもが継がない場合でも会社を残すために意識したいポイントについて解説します。

“社長の会社”から“組織の会社”へ変える

中小企業では、会社の経営が社長個人に大きく依存しているケースが少なくありません。営業、人脈、重要な意思決定などの多くを経営者自身が担っており、いわば「社長の会社」になっている状態です。

しかしこのような会社は、経営者が退任した瞬間に経営が不安定になる可能性があります。子どもが会社を継がない場合、社内の役員や第三者が経営を引き継ぐケースも増えますが、経営が個人に依存している会社は引き継ぎが難しくなる傾向があります。

そのため、事業承継を考える際には「社長がいなくても回る会社」に近づけていくことが重要です。権限や業務を組織の中で分担し、経営判断も複数の人材が関与する体制を整えることで、会社はより持続可能な形になります。これは後継者の有無にかかわらず、会社の成長にとっても大きなプラスとなる取り組みといえるでしょう。

経営者依存を減らす仕組みを作る

会社を残すためには、経営者個人に依存している業務や情報を整理することも重要です。たとえば、重要な取引先との関係が社長の個人的な人脈に依存している場合、経営者が退任すると取引そのものが不安定になる可能性があります。

そのため、営業活動や顧客管理を組織的に行う仕組みを整えることが大切です。取引先との関係を会社全体で共有することで、経営者が変わっても事業を継続しやすくなります。

また、業務のマニュアル化や社内ルールの整備も重要なポイントです。業務の進め方が特定の人しか分からない状態では、承継後の運営が難しくなってしまいます。業務内容を整理し、誰が見ても理解できる形にしておくことで、会社の運営は安定します。

こうした取り組みは一見地味に見えるかもしれませんが、会社を長く存続させるためには欠かせない基盤づくりです。

会社の強みや価値を整理する

会社を残すためには、「自社がどのような価値を提供している会社なのか」を整理することも重要です。これは、将来の後継者や第三者が会社を引き継ぐ際の判断材料にもなります。

たとえば、長年培ってきた技術力や地域での信頼、安定した顧客基盤などは企業の大きな強みです。こうした強みが明確になっている会社は、従業員承継やM&Aなどの選択肢も広がりやすくなります。

一方で、自社の強みが整理されていない場合、後継者候補にとって会社の将来像が見えにくくなることがあります。経営者自身が会社の魅力や可能性を言語化しておくことは、承継を進めるうえでも大きな意味を持ちます。

事業承継は10年単位で考える

事業承継は、短期間で完了するものではありません。後継者の選定や育成、株式の整理、組織体制の整備など、多くの準備が必要になります。そのため、理想的には10年程度の時間をかけて計画的に進めることが望ましいとされています。

特に子どもが会社を継がない場合は、親族外の人材や企業への承継を検討することになるため、より多くの準備が必要になるケースもあります。早めに承継を意識して会社の体制を整えておくことで、将来の選択肢は大きく広がります。

また、事業承継は単なる引き継ぎではなく、会社の未来を考える重要な経営テーマでもあります。どのような形で会社を残すのか、どのような経営を次の世代に託すのかを考えることは、会社の方向性を見直す機会にもなるでしょう。

子どもが会社を継がないからといって、会社の未来が閉ざされるわけではありません。早い段階から準備を進めることで、会社を次の世代へつなぐ道は必ず見えてきます。

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税務だけでは解決できない「事業承継の問題」

事業承継という言葉を聞くと、「相続税対策」や「自社株対策」といった税務の問題を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。確かに、事業承継において税務は重要な要素の一つです。しかし実際の現場では、税金の問題だけを解決しても事業承継がうまく進まないケースが少なくありません。事業承継は単なる税務手続きではなく、会社の未来を左右する経営課題でもあります。
ここでは、税務だけでは解決できない事業承継の問題について解説します。

税金対策だけでは会社は引き継げない

事業承継の相談では、「相続税をできるだけ減らしたい」「自社株の評価を下げたい」といった税務対策の話から始まることがよくあります。もちろん、こうした対策は重要です。自社株の評価額が高いまま相続が発生すると、後継者に大きな税負担がかかる可能性があるため、事前の対策は欠かせません。

しかし、税金の問題だけを解決しても、それだけで会社の承継が完了するわけではありません。たとえば、後継者の育成が十分でなかったり、経営体制が整っていなかったりすると、会社は安定して運営できなくなる可能性があります。また、従業員や取引先からの信頼をどのように引き継ぐかといった課題もあります。

つまり、事業承継は税務の問題だけでなく、経営・組織・人材など多くの要素が関係する総合的なテーマなのです。

経営・財務・税務の三位一体で考える必要がある

事業承継を成功させるためには、税務だけでなく、経営や財務の視点も含めて検討することが重要です。たとえば、会社の財務状況が不安定な場合、後継者にとって経営の負担が大きくなってしまう可能性があります。過剰な借入や収益性の低い事業を抱えている場合は、承継前に整理や改善を行う必要があるかもしれません。

また、会社の経営体制が経営者個人に依存している場合も、承継の大きな障壁になります。重要な取引先との関係や意思決定がすべて経営者一人に集中していると、後継者が引き継ぐ際に大きな負担が生じてしまいます。そのため、事業承継を見据えて組織体制を整えることも重要な準備の一つです。

さらに、株式の分散や相続人間の関係など、家族の問題が影響するケースもあります。事業承継では、経営と資産の両方をどのように引き継ぐかを考える必要があるため、税務だけでなく幅広い視点での検討が求められます。

専門家を早めに活用するメリット

事業承継には、税務、財務、法務、経営などさまざまな分野の知識が必要になります。そのため、経営者一人ですべてを判断するのは難しい場合も少なくありません。こうしたときに重要になるのが、専門家のサポートです。

税理士やコンサルタントなどの専門家は、税務対策だけでなく、会社の財務状況や承継方法の選択肢についてもアドバイスを行うことができます。また、M&Aや従業員承継などの具体的な手続きについてもサポートを受けることが可能です。

特に事業承継は時間がかかるテーマであるため、早い段階から相談しておくことが大きなメリットになります。早めに準備を始めることで、会社の状況に合った承継方法を検討する時間が確保でき、選択肢も広がります。

事業承継は、単なる税金対策ではなく、会社の未来を考える重要な経営課題です。税務だけに目を向けるのではなく、経営や財務の視点も含めて総合的に準備を進めることが、円滑な承継につながるといえるでしょう。

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