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事業承継の3つの方法(親族・従業員・第三者)を徹底解説

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経営者の高齢化が進む中、「事業承継」は中小企業・法人において避けて通れない経営課題となっています。

中小企業庁の調査によると、中小企業の約半数が後継者未定のまま事業を続けており、黒字であっても廃業を余儀なくされるケースが年々増加しています。

こうした状況を踏まえ、事業承継を“早期に計画的に進める”ことが企業の持続的成長に不可欠となっています。事業承継とは、単に経営者の交代を意味するものではありません。

経営権(株式)・経営ノウハウ・人材・取引先・ブランド価値など、企業の「目に見えない資産」まで引き継ぐ重要なプロセスです。しかし、承継の方法によって準備内容やリスク、税務対応が大きく異なります。

この記事では、法人の事業承継における3つの主要な方法を整理し、それぞれの特徴・メリット・デメリット・進め方を解説します。

それぞれの特徴を理解した上で、自社に最も適した承継方法を検討することが、企業価値を守り、次世代へつなぐ第一歩となりますので、是非参考にしてください。

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この記事の目次

なぜ「事業承継」は今、法人経営者にとって最重要テーマか

2025年には、70歳を超える中小企業経営者が約245万人に達するとされ、その約半数が後継者未定といわれています。

これは単なる個社の問題に留まらず、地域経済や雇用維持に直結する社会的課題となっています。さらに、事業承継には3〜5年の準備期間が必要とされ、早期着手が成功の鍵を握ります。

事業承継の課題は「誰に」「どのように」引き継ぐかに集約されます。親族・従業員・第三者のいずれを選ぶかで、税務対策・資金計画・経営権移譲の進め方が大きく変わります。

したがって、自社にとって最適な承継方法を理解し、早めに計画を立てることが重要です。計画を立てる上で、欠かせない、法人の事業承継における3つの主要な方法について、ここから解説していきます。

事業承継の3つの方法とは

事業承継には大きく分けて「親族承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つの方法があります。

いずれの方法も、経営権や資産をどのように次世代へ引き継ぐかを明確にし、計画的に進めることが重要です。ここでは、それぞれの特徴・メリット・注意点を整理します。

親族承継

定義と概要

親族承継とは、現経営者の子ども・配偶者・兄弟姉妹などの親族に会社を引き継ぐ方法です。

日本では最も一般的な事業承継の形であり、経営理念や取引先との信頼関係を引き継ぎやすい点が特徴です。一方で、相続税・贈与税など税務上の対策や、親族間での意見調整が必要になるケースも多く見られます。

〈メリット〉

・経営理念や企業文化を維持しやすい

・取引先や金融機関からの信頼を得やすい

・長期的な教育・育成が可能

〈デメリット〉

・親族内に適任者がいない場合がある

・相続税・贈与税などの負担が大きくなる可能性

・親族間の意見対立が経営に影響するリスク

実務プロセス・税務留意点

親族承継では、まず後継者候補の選定と育成を早い段階から進めることが重要です。次に、株式の移転方法(贈与・売買・相続)や、事業承継税制の適用可否を慎重に確認します。

事業承継税制の特例制度を利用すれば、贈与税・相続税が大幅に猶予される可能性がありますが、要件が複雑で、事後の管理や報告義務が厳しいため、制度の活用には一定のリスクや負担が伴います。 そのため、税務面だけでなく、将来の経営体制や財務状況も踏まえて、総合的に判断しながら承継計画を進めることが望ましいと言えます。

また、遺言書の作成や株主間契約の整備など、法的な準備も早めに行い、トラブルを未然に防ぐ体制を整えておきましょう。

従業員承継(役員・幹部社員承継)

定義と概要

従業員承継とは、会社の役員や幹部社員など、社内で経験を積んだ人材に事業を引き継ぐ方法です。親族に後継者がいない場合や、社内で経営能力に優れた人材がいる場合に選択されます。

この方法は、企業文化や取引先関係を維持しやすく、比較的スムーズな経営移行が可能です。

〈メリット〉

・経営状況や社内体制を理解しているため、承継後の安定性が高い

・社員や取引先の理解を得やすい

・経営者と後継者の協働期間を設けやすい

〈デメリット〉

・後継者が株式を取得するための資金調達が課題となる

・「元上司→部下」の立場逆転による社内摩擦が生じることも

・規模が大きい企業ほど、株式の買い取り負担が大きくなる

実務プロセス・税務留意点

従業員承継の場合、まずは候補者の選定と合意形成を社内で丁寧に行うことが重要です。次に、株式を買い取るための資金スキーム(MBO:Management Buyoutなど)を設計します。

この際、銀行融資・信用保証協会の制度・中小企業庁の支援制度などを活用できます。また、譲渡時の株価評価や譲渡益課税など、税務上の処理を正確に行うことが欠かせません。

事前に税理士・専門家への相談を行い、譲渡価格と税負担のバランスを最適化することがポイントです。

MGS税理士事務所では、事業譲渡に関するご相談を承っております。お気軽にご相談くださいませ。

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第三者承継(外部承継・M&A)

定義と概要

第三者承継とは、親族や社内に後継者がいない場合に、外部の経営者や企業へ会社を引き継ぐ方法です。多くの場合、M&A(企業の合併・買収)という手段で実施されます。

近年は、後継者不足を背景に、第三者承継を選択する中小企業が急増しています。

〈メリット〉

・親族や社内に後継者がいなくても事業を存続できる

・売却益を得ることで経営者の引退後の生活資金を確保できる

・買い手企業の資金力・ノウハウを活かして事業拡大が見込める

〈デメリット〉

買い手企業との企業文化の違いによる摩擦リスク

買収交渉・契約手続きに時間とコストがかかる

従業員や取引先が不安を抱く可能性がある

実務プロセス・税務留意点

第三者承継では、まずM&A仲介会社や専門家への相談から始めます。続いて、企業価値評価(バリュエーション)を実施し、買い手候補とのマッチングを進めます。

交渉段階では、秘密保持契約(NDA)→基本合意→デューデリジェンス(詳細調査)→ 最終契約というプロセスを経ます。

株式譲渡や事業譲渡のいずれかを選択する場合、それぞれ譲渡益課税・消費税・登録免許税の扱いが異なるため、
事前に税理士によるシミュレーションが不可欠です。

また、M&A後のPMI(統合作業)を計画的に行うことで、従業員の定着や業務の安定化を図ることができます。

各方法の比較と選定指標

事業承継には「親族承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つの方法がありますが、それぞれの方法は自社の規模・人材構成・財務状況・成長方針によって適否が大きく異なります。

ここでは、各方法の比較と、法人として検討すべき選定指標を整理します。

比較表(承継方式・適合企業規模・後継者候補有無・資金要件・リスク)

まずは3つの承継方法を主要な観点で比較してみましょう。
下表は、MGS税理士事務所が中小企業向け支援を行う中で整理した一般的な特徴です。

承継方法 適合する企業規模 後継者候補 主な資金要件 主なリスク・課題
親族承継 小〜中規模企業 親族(子・配偶者・兄弟など) 相続税・贈与税の納税資金 親族間の意見対立、税務負担、適任者不在
従業員承継 中規模〜中堅企業 社内の役員・幹部社員 株式買取資金(MBO)・金融機関融資 資金調達負担、社内調整、経営経験不足
第三者承継(M&A) 中堅〜大規模企業 外部の企業・経営者・投資家 買収資金(企業価値に応じて) 企業文化の摩擦、従業員の不安、統合後リスク

親族承継は「理念・信用の継続性」を重視する企業に適し、
従業員承継は「社内の安定・実務理解」を重んじる中規模法人に向いています。

一方、第三者承継(M&A)は後継者不在の解決策として有効ですが、法務・税務・統合作業の負担が大きくなります。

選ぶべき指標(後継者の有無・社内承認・資金・企業価値・成長戦略)

事業承継の最適な方法は、企業の内部資源と外部環境の両面から判断します。以下の5つの指標を軸に検討すると、自社に合った方向性を見極めやすくなります。

① 後継者の有無

まず最も基本的なのが、後継者候補が社内または親族内に存在するかという点です。候補者がいない場合は、第三者承継(M&A)の検討が現実的になります。

② 社内承認と組織文化

後継者が社内にいる場合でも、社員や幹部からの信頼・承認が得られるかが重要です。従業員承継では、経営交代に伴う社内のモチベーション管理が成功の鍵を握ります。

③ 資金調達力

株式移転や相続税の納税資金、M&Aの買収資金など、どの方法でも資金確保が不可欠です。早期に財務状況を把握し、融資・事業承継税制・補助金などを活用する準備が必要です。

④ 企業価値と成長方針

企業の規模・収益性・将来性によって、承継方法の選択肢が変わります。たとえば、今後の事業拡大を視野に入れる場合は、第三者承継によるグループ化や事業再編も有効です。

⑤ 経営者の引退時期とライフプラン

事業承継には3〜5年の期間が必要とされます。経営者自身の引退年齢や資産計画に基づき、いつ・誰に・どのように承継するかを逆算して決めましょう。

法人特有の注意点(株主構成・役員構成・経営者保証・支援制度)

法人が事業承継を進める際は、個人事業主と異なり法的・組織的な課題が発生します。特に以下の4点は早期に確認すべき重要ポイントです。

1. 株主構成の整理

株主が複数いる場合、議決権の分散が意思決定の障害になることがあります。承継前に主要株主との合意形成を図り、持株比率を整理しておくことが望ましいです。

2. 役員構成の見直し

代表者交代に伴い、取締役・監査役の人選や任期を再設計する必要があります。新経営体制に適したガバナンス構造を構築し、名ばかり役員の整理も検討しましょう。

3. 経営者保証の解除

金融機関の借入に経営者個人保証が付いている場合、後継者への引き継ぎが難航します。事前に「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、法人と個人の分離(ガバナンス・財務の透明化)を進めておくことが重要です。

4. 支援制度の活用

中小企業庁が設置する「事業承継・引継ぎ支援センター」では、承継の無料相談やM&Aマッチング支援、専門家派遣などの制度が用意されています。


また、事業承継税制(特例)を活用すれば、相続税・贈与税が最大で100%猶予される場合もあります。税理士・金融機関と連携しながら、制度を適切に活用することで承継コストを大幅に抑えられます。

実務ステップとスケジュール

事業承継は一朝一夕では完了しません。中小企業庁の指針でも、着手から完了までおおむね3〜5年が必要とされています。ここでは、実務的な4つのフェーズに分けて、計画の進め方を整理します。

フェーズ1:現状診断(株式構成・後継者・企業価値)

事業承継の第一歩は、現状の正確な把握です。まず、会社の株式構成・経営体制・財務状況・後継者候補の有無を整理します。

主な確認項目

・【株式構成】誰がどの程度の議決権を持っているか

・【財務状況】直近3〜5年のBS・PL・CFの傾向、借入・保証・担保の有無

・【企業価値評価】自社株評価や時価純資産法・DCF法による算定

・【後継者候補】親族・社内・外部候補の一覧化と意向確認

ここでの目的は、経営資源と課題を「見える化」することです。

フェーズ2:設計(株式移転・税務・事業承継計画)

現状を把握したら、次は「どう引き継ぐか」の設計段階です。承継の方式(親族・従業員・第三者)に応じて、株式移転のスキーム・税務対策・経営体制設計を進めます。

主な実務内容

・株式移転計画:贈与・譲渡・相続のいずれかを選定

・事業承継税制の適用検討:特例制度の要件確認(認定・雇用要件・年次報告)

・経営体制設計:後継者の役職・権限範囲・取締役構成の再設計

・金融機関・保証人対応:経営者保証ガイドラインに基づく解除準備

このフェーズでは、税理士・弁護士・金融機関を交えて、資金計画と税務リスクの最適化を行います。また、事業承継計画書を作成し、社内外に説明できる体制を整えることが重要です。

フェーズ3:実行/移行(株式譲渡・役員交代・ガバナンス整備)

設計が固まったら、いよいよ実行フェーズです。ここでは、株式譲渡や役員交代などの形式的な承継に加え、実質的な経営移行を進めます。

主な実務内容

・株式譲渡・贈与・相続の実施

・役員変更登記・代表取締役交代

・後継者への権限移譲・経営会議体制の確立

・主要取引先・金融機関・従業員への説明・信頼関係維持

内部統制・就業規則・ガバナンス文書の更新

この期間は、旧経営者と新経営者が二重体制で協働する「橋渡し期間」を設けるのが理想です。特に中小企業では、取引先・社員との心理的な信頼関係が企業存続を左右するため、段階的な交代と丁寧な情報共有が不可欠です。

フェーズ4:定着・フォロー(モニタリング・次世代育成)

承継が完了した後も、新体制が安定的に機能しているかを継続的にモニタリングすることが大切です。税務・会計・人事などの運用を定期的に見直し、次の世代への準備を進めます。

主な実務内容

・経営KPIのモニタリング(売上高、利益率、離職率など)

・内部監査・税務申告体制の安定化

・後継者育成計画の更新

・新規事業・成長戦略へのシフト

また、承継後の数年間は「PMI(統合作業)」を意識し、旧経営者が顧問的立場でフォローする体制も効果的です。承継のゴールは「引き継ぐこと」ではなく、「次世代が自立して成長できる状態をつくること」です。

各方式別に特有の実務ポイント 「親族・従業員・第三者それぞれ」

承継方式によって、実務上の留意点は大きく異なります。ここでは、それぞれの方法における代表的なポイントを整理します。

① 親族承継

贈与税・相続税の事前試算を必ず実施し、納税資金の確保を行う

・株式評価額の引き下げ対策(退職金・配当設計・生命保険活用など)

・遺留分対策として遺言書・株主間契約の整備を行う

・早期に後継者教育計画(経営・財務・人事)をスタートさせる

② 従業員承継

・MBO(Management Buyout)スキームを活用し、株式買い取り資金を確保

金融機関・投資会社・信託を通じた資金調達サポートを検討

・承継前に社内合意形成・幹部の支持を得て、体制の分裂を防ぐ

・譲渡益課税・株価算定方法の適正化を専門家と確認

③ 第三者承継(M&A)

・M&A仲介会社・税理士・弁護士を交えたチーム体制を構築

・企業価値評価(バリュエーション)とデューデリジェンス(買収監査)を実施

・秘密保持契約(NDA)→基本合意→最終契約→クロージングの流れを理解

・譲渡益課税や消費税・登録免許税の発生タイミングを把握

・統合後はPMI(Post Merger Integration)を3〜6か月単位で進行

自社に合った事業承継を早期に計画することが成功の第一歩

事業承継は、経営者の引退時期に合わせて動けばよいテーマではありません。実際には、後継者の選定・株式の移転・税務対策・社内外の合意形成など、多くの準備が必要です。

そのため、少なくとも3〜5年前から計画的に進めることが、円滑な承継の鍵となります。事業承継には「親族承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つの方法があります。

それぞれにメリットとリスクがあり、最適な選択肢は企業ごとに異なります。

・親族承継:理念や信用を継ぎやすく、長期的な安定を見込めるが、相続・贈与税の対策が必須

・従業員承継:社内理解と安定性が高いが、株式買取資金や社内合意形成が課題

・第三者承継(M&A):後継者不在を解消できるが、法務・税務・統合対応の専門知識が必要

こうした違いを踏まえ、まずは現状分析(株式構成・後継者の有無・企業価値評価)を行い、次に税制・支援制度を活用した計画設計に進むことが重要です。

MGS税理士法人は、後継者選定・税務対策・株式承継・法務手続きまで一括支援。

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