中小企業の事業承継・M&Aを成功に導くための進め方をMGS税理士法人が徹底解説いたします。現状把握から準備・実行・PMIまで、失敗しないためのポイントを分かりやすく紹介しますので、是非参考にしてください。
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この記事の目次
- 1. 日本における事業承継・M&Aの現状と背景
- 2. できるだけ早く準備が必要な理由(高齢化・後継者不足・業界変化など)
- 3. 具体的なデータで見る現状・課題
- 4. 承継・M&Aを選択する前に明確にするべき目的と戦略
- 5. 手法・スキームの種類(親族承継・従業員承継・第三者承継/株式譲渡 vs 事業譲渡/増資など)
- 6. 戦略の方向性を決めるための問い(何を残すか・何を手放すか・利害関係者は誰か)
- 7. 準備フェーズ「現状把握と改善のためのチェック項目」
- 8. 実行フェーズ「M&Aを進めるためのステップ」
- 9. 成功のポイントとよくある失敗パターン
- 10. よくある失敗・リスク事例とその回避策
- 11. 法制度・支援制度・ガイドラインの活用
- 12. まとめ
日本における事業承継・M&Aの現状と背景

街を歩けば、創業から何十年も続く老舗の看板や、地域に根差した中小企業の工場や店舗を目にすることができるかと思います。これらの企業は、単なるビジネスではなく、地域社会の雇用を守り、独自の技術やサービスを育んできた大切な存在です。
しかし、その裏では静かに大きな変化が進んでいます。経営者の多くが60代、70代を迎える中で、「後を託す人が見つからない」という悩みを抱える企業が増えているのです。
長年一緒に働いてきた従業員を思えば、簡単に廃業という選択はできない。しかし、親族も従業員も後継ぎを望まず、時間だけが過ぎていく、そんな状況に直面する経営者は少なくありません。
その一方で、ここ数年「第三者承継」という新たな選択肢が広がっています。M&Aによって会社を次の担い手へ引き継ぐことで、事業は存続し、従業員の雇用も守られるという選択肢。さらに、新しい経営資源が加わることで、かえって成長のチャンスを掴む企業も増えてきました。
日本もこの動きに後押しするよう、中小M&Aガイドラインの策定や支援制度の整備によって、経営者が安心して承継・M&Aを進められる環境が整いつつあります。
今は「事業をたたむ」か「誰かに譲る」かで迷うのではなく、「どう次世代へつなぐか」を考える時代に入っているのだと感じます。
事業承継やM&Aは、単なる経営者交代の問題ではありません。それは、これまで築いてきた歴史や想いを未来へどう受け渡すかという、経営者にとって最後で最大の経営判断になります。
できるだけ早く準備が必要な理由(高齢化・後継者不足・業界変化など)

「まだ元気だから」「もう少し落ち着いたら考えよう」多くの経営者が、事業承継やM&Aを後回しにしがちです。しかし、できるだけ早く準備を始めなければならない理由がいくつもあります。
まず第一に、経営者の高齢化です。日本の中小企業経営者の平均年齢は60歳を超え、引退が現実となる時期に差し掛かっています。
健康や突発的な事情によって、突然バトンを渡さざるを得ない場面は誰にでも起こり得ます。準備が整っていなければ、会社の存続そのものが危うくなる可能性があります。
次に、後継者不足の深刻さ。親族が事業を継がない、従業員に継ぐ意思がないといったケースは年々増えています。「いざ探そう」と思ったときには、適任者が見つからず、会社を畳まざるを得ないという状況も少なくありません。事前に候補を見極め、計画的に育成することが必要になってきます。
さらに、業界構造の変化も大きな要因です。デジタル化、働き方改革、環境対応など、変化のスピードはかつてないほど速くなっています。次世代に引き継ぐためには、単に会社を残すだけではなく、新しい経営環境に対応できる体制づくりが欠かせません。
M&Aは、そうした変化に対応するための経営資源を取り込む有効な手段でもあります。事業承継やM&Aは、突然の引退をきっかけに進めるものではなく、5年、10年という長期的な視野で取り組むべき経営課題です。
「まだ早い」と思う今こそ、将来に備える最良のタイミングです。ここからは具体的なデータをもとに、現状について解説していきます。
具体的なデータで見る現状・課題

1、経営者の平均年齢と後継者未定率の実態
日本の中小企業を取り巻く最大の課題のひとつが、経営者の高齢化です。中小企業庁の統計によれば、経営者の平均年齢はすでに60歳を超え、70歳以上が経営を続けている企業も決して珍しくありません。
かつて「60歳で引退」という考えが一般的だった時代から大きく変わり、多くの経営者が高齢になっても現場に立ち続けているのが現状です。
しかし、その裏側には深刻な問題があります。それは「後継者が決まっていない」企業の多さです。調査では、60歳以上の経営者のうち半数近くが「後継者未定」と回答していて、特に親族に引き継ぐ割合は年々減少傾向にあります。
結果として、黒字経営でありながら後継者不在を理由に廃業を選ばざるを得ない企業が増えています。この状況は単なる一企業の問題にとどまりません。熟練の技術や顧客との信頼関係、地域での雇用が一度に失われてしまうからです。
つまり、事業承継は「個々の会社の未来」だけでなく「地域経済や産業基盤の持続性」に直結する重要課題なのです。
2、休廃業・解散の件数と業種・規模の傾向
近年、中小企業において「休廃業」や「解散」を選択するケースが増えています。中小企業庁や帝国データバンクの調査によると、黒字経営であっても後継者不在を理由に事業を畳む企業は少なくありません。実際に、毎年数万社規模の企業が市場から姿を消しており、その数は倒産件数を大きく上回っています。
業種別に見ると、建設業、製造業、小売業、サービス業など地域に根差した分野での休廃業が目立っています。これらの業種は長年の取引関係や専門技術に支えられているため、後継者がいないことで地域経済や雇用に大きな影響を及ぼします。
また、企業規模としては従業員数が10名未満、年商1億円未満といった小規模事業者で特に多い傾向があります
注目すべきは、その多くが必ずしも経営不振に陥っていたわけではないという点です。むしろ堅実な経営を続けてきたにもかかわらず、「後を継ぐ人がいない」という理由だけで幕を下ろすケースが増えているのです。これは経営者個人の問題にとどまらず、地域の産業構造や社会全体の課題といえます。
こうした状況を踏まえると、事業承継やM&Aは「成長戦略の手段」であると同時に、「廃業を避けるための最後の砦」としての役割も担っています。今のうちに準備を進めるかどうかが、企業の未来を大きく左右します。
3、M&Aを選ぶ企業の数・割合・成約件数の推移
中小企業の事業承継の手段として「M&A」を選ぶケースが急増しています。かつては「会社を売る」ことに抵抗を持つ経営者も少なくありませんでした。
しかし今では、M&Aは後継者問題を解決する有効な選択肢として社会的に受け入れられ、むしろ「会社を未来につなぐための積極的な戦略」として認識されつつあります。
実際、国内のM&A件数はこの10年で右肩上がりに増加しており、その多くを中小企業が占めています。とくに近年は、親族や従業員に承継する割合が減少する一方で、第三者への承継、すなわちM&Aによる事業承継が大幅に拡大しています。
背景には、後継者不足の深刻化だけでなく、外部の経営資源を取り込むことで会社を成長させたいという前向きな動機もあります。
また、仲介会社や金融機関のサポート体制が整備され、M&A市場そのものが中小企業にとって利用しやすい環境になってきました。国も「中小M&Aガイドライン」を策定し、取引の透明性と信頼性を高める仕組みを整えています。こうした追い風もあり、成約件数は年々増加傾向を示し、今やM&Aは中小企業にとって一般的な承継手法の一つとなりました。
つまり、M&Aは「後継者がいないから仕方なく選ぶ手段」ではなく、「会社を次のステージに進めるための戦略的選択肢」として定着しつつあるのです。
承継・M&Aを選択する前に明確にするべき目的と戦略

主な目的(事業継続/創業者利益/成長戦略/地域貢献など)
事業承継やM&Aを検討する際、まず明確にしておきたいのが「何のために承継するのか」という目的です。この軸が定まっていないと、手段だけに振り回され、結果的に後悔の残る承継になりかねません。
最も多いのは 「事業継続」 を目的とするケースです。長年培ってきた技術や顧客基盤、そして従業員の雇用を守ることは、多くの経営者にとって最大の関心事です。特に地域に根ざした企業では「この事業をなくしてはいけない」という使命感が強く表れます。
次に挙げられるのが 「創業者利益の確保」 です。会社に投じてきた資金や労力を適切に回収し、老後資金や次の挑戦に備えたいと考える経営者も少なくありません。M&Aによる株式売却は、その実現手段のひとつです。
さらに近年増えているのが、承継を 「成長戦略」 と位置付けるケースです。外部の企業に承継することで、販路や人材、資本力といった新しい経営資源を取り込み、むしろ自社を次のステージへと押し上げる選択肢です。
最後に忘れてはならないのが 「地域貢献」 です。事業を次世代につなぐことは、単なる経営判断にとどまらず、地域経済や社会を守ることにもつながります。実際、承継後も「地元の雇用を守りたい」「取引先を困らせたくない」と考える経営者は多く、そこに強い責任感が表れています。
このように目的は一つではなく、複数が重なり合うこともあります。大切なのは、自分自身がどの目的を最優先にするのかを見極め、それに合った承継の方法を選ぶことです。
手法・スキームの種類(親族承継・従業員承継・第三者承継/株式譲渡 vs 事業譲渡/増資など)

事業承継やM&Aには、いくつかの代表的な手法やスキームがあります。自社の状況や目的に応じて、最適な方法を選ぶことが重要です。
まず大きく分けると、「誰に承継するか」 と 「どのように承継するか」 という二つの視点があります。
1. 承継先による分類
親族承継
もっとも伝統的な形で、経営者の子どもなど親族に引き継ぐ方法です。信頼関係や経営理念を受け継ぎやすい一方、相続税や贈与税の負担、後継者の意欲や能力といった課題もあります。
従業員承継
長年会社を支えてきた役員や幹部社員に引き継ぐ方法です。社内事情に精通しているため、従業員や取引先からの理解も得やすい反面、株式や資金調達の課題を伴うことがあります。
第三者承継(M&A)
親族や社内に後継者がいない場合に増えている方法で、外部の企業や投資家に引き継ぐ形です。買い手の経営資源を活用できるため、事業の成長機会が広がる一方、文化の違いや統合プロセス(PMI)への配慮が欠かせません。
2. スキームによる分類
株式譲渡
株主が保有する株式を譲渡し、会社そのものを引き渡す方法。手続きが比較的シンプルで、会社の契約関係もそのまま引き継がれます。
事業譲渡
会社の一部または全部の事業を譲渡する方法。不要な事業を切り離せる一方、契約や許認可の移転手続きが必要になります。
増資(第三者割当増資など)
新たな株式を発行して第三者に引き受けてもらい、経営権を徐々に移す方法。資金調達を兼ねられる点がメリットです。
戦略の方向性を決めるための問い(何を残すか・何を手放すか・利害関係者は誰か)

事業承継やM&Aは、単なる引き継ぎの手続きではなく「経営の最終戦略」ともいえる重要な意思決定です。その方向性を誤らないためには、経営者自身がいくつかの根本的な問いに向き合う必要があります。
1. 何を残すのか
自社の中で「絶対に次世代に残したいもの」は何でしょうか。長年守ってきた技術、顧客との信頼関係、従業員の雇用、あるいは企業理念そのものかもしれません。まずは「守るべき資産」を明確にすることが、承継戦略の軸となります。
2. 何を手放すのか
一方で、すべてを抱え込む必要はありません。収益性の低い事業や非効率な業務、あるいは経営者自身がこだわりすぎていた慣習を思い切って手放すことで、承継後の会社は新しい成長のチャンスを掴むことができます。M&Aを通じて必要な事業だけを残し、不要なものを整理するケースも増えています。
3. 誰が利害関係者なのか
承継の影響を受けるのは、後継者や従業員だけではありません。取引先、金融機関、地域社会。
そのすべてが会社の未来とつながっています。誰に、どのような影響が及ぶのかを整理することは、トラブルを避け、スムーズな承継を実現するために欠かせませんので、その点を覚えておいてください。
準備フェーズ「現状把握と改善のためのチェック項目」

財務・会計状態の整理
まず確認すべきは、会社の数字が「正しく見える状態」になっているかどうかです。決算書の内容はもちろん、負債や資産の内訳、キャッシュフローの流れを明確にしておくことが欠かせません。数字に不透明さが残っていると、後継者や買い手からの信頼を損ない、承継交渉が進みにくくなります。
✔︎ チェックポイント:直近3期の決算書の整合性/債務整理の進捗/資産の評価方法/日常的な資金繰りの安定性
無形資産の整理
事業の価値は決算書に現れない部分にも隠れています。ブランドの信頼、独自の技術、社員のノウハウ、長年築いた顧客との関係。これらは会社の「見えない資産」です。承継の際には、口伝や経験に頼らず、引き継げる形に言語化・文書化しておくことが大切です。
✔︎ チェックポイント:主要顧客との契約・関係性/技術やノウハウのマニュアル化/ブランドや商標の権利関係/口コミや信頼度といった評価
ガバナンス・組織・属人的業務の見直し
「経営者しか分からない」「特定の社員しかできない」業務が多い会社は、承継後に必ず混乱が生じます。意思決定のプロセスや権限を整理し、組織として機能する仕組みに移行することが必要です。承継をきっかけに、属人化を解消し、ガバナンス体制を整えることは大きな改善のチャンスでもあります。
✔︎ チェックポイント:業務フローのマニュアル化/役職ごとの権限・責任の明確化/会議体・報告ルートの整理/経営判断が属人化していないか
後継者選びと育成
承継の成否を左右するのが後継者の存在です。候補者がどのようなタイプか、経営者としての資質や意欲があるかを見極める必要があります。そのうえで、必要な知識・経験を計画的に積ませ、時間をかけて育成していくことが不可欠。「突然任せる」のではなく、段階的に権限を移譲する仕組みが理想的です。
✔︎ チェックポイント:候補者の資質・意欲/経営に必要な知識・資格/社内外での信頼関係/権限移譲の段階的な計画
実行フェーズ「M&Aを進めるためのステップ」

専門家チームの構成
M&Aは税務・法務・財務など幅広い知識が必要です。税理士・弁護士・会計士・仲介会社といった専門家をチームとして組み、役割を明確にすることで、リスクを減らしつつ交渉を有利に進められます。
✔︎ チェックポイント:誰が税務・法務を担当するか/仲介会社やFA(フィナンシャルアドバイザー)の選定基準
秘密保持契約(NDA)・アドバイザリー契約など前提準備
交渉に入る前に、情報漏洩を防ぐための秘密保持契約(NDA)を締結します。また、専門家に依頼する際はアドバイザリー契約を結び、業務範囲や報酬を明確化しておくことが重要です。
✔︎ チェックポイント:NDAの締結有無/契約内容(業務範囲・成功報酬・途中解約条件など)
相手先探しと交渉(ソーシング・マッチング)
自社に合う買い手・売り手を探すのは簡単ではありません。業界知識やネットワークを活かせる仲介会社のサポートが有効です。候補先とは複数回の面談を重ね、経営方針や文化が合うかを慎重に見極める必要があります。
✔︎ チェックポイント:候補企業の数と選定基準/経営方針・企業文化の相性
デューデリジェンス(財務/法務/人的/環境面など)
買い手は対象企業のリスクを洗い出すため、財務・法務・人材・環境面などの調査を行います。売り手側も「見られて困る点」を事前に整理しておくことが大切です。準備不足だと評価が下がる要因になりかねません。
✔︎ チェックポイント:決算書・契約書の整備/潜在債務や訴訟リスク/キーパーソン社員の状況
契約締結(株式譲渡契約、事業譲渡契約、株主契約など)
条件交渉がまとまれば契約を結びます。株式譲渡契約や事業譲渡契約では、売買価格だけでなく表明保証や違約条項など細部の取り決めが非常に重要です。専門家のチェックなしにサインすることは避けましょう。
✔︎ チェックポイント:契約書のリーガルチェック/価格以外の条件(表明保証・競業避止・支払い方法)
PMI(Post Merger Integration:統合後の引き継ぎ実務)
契約後こそ、最も重要なフェーズです。組織・システム・文化の統合(PMI)が円滑に進まなければ、せっかくのM&Aも失敗に終わります。従業員の不安解消や業務手順の統合に計画的に取り組む必要があります。
✔︎ チェックポイント:従業員への説明会/業務プロセス・ITシステムの統合計画/経営理念・文化の共有
経営者保証・債務・責任などの引継ぎ
中小企業では経営者が個人保証をしているケースが多く、承継時の大きな課題となります。金融機関との交渉や債務整理を早めに進め、後継者や買い手が安心して承継できる環境を整えることが不可欠です。
✔︎ チェックポイント:経営者保証の有無/借入金の返済条件/金融機関との合意形成
成功のポイントとよくある失敗パターン

成功の共通点
事業承継やM&Aを成功させている企業には、いくつかの共通点があります。
早期準備
少なくとも5年〜10年先を見据えて準備を始めた企業は、財務・組織の整理や後継者育成に十分な時間を確保できています。
透明性の確保
財務情報や契約関係を整理し、相手に正直に開示する姿勢が信頼につながります。
関係者調整
従業員や取引先、金融機関などのステークホルダーに早めに説明を行い、安心感を与えることがスムーズな承継の土台になります。
専門家の活用
税務・法務・財務のプロを早期に関与させ、複雑な課題を客観的に解決している点も成功事例に共通します。
✔︎ チェックポイント:準備開始のタイミング/財務・法務の整理度合い/関係者とのコミュニケーション計画/専門家のチーム体制
よくある失敗・リスク事例とその回避策

一方で、承継・M&Aが失敗に終わるケースも少なくありません。よくある事例は以下のとおりです。
株価の過小評価・過大評価
根拠のない企業価値評価で交渉が難航。
→ 回避策:専門家による正確なバリュエーションを実施する。
税務トラブル
贈与税や相続税の対策不足で多額の税負担が発生。
→ 回避策:税理士と連携し、承継前から税務シミュレーションを行う。
従業員の不安・離職
承継の情報を伝えるのが遅れ、社員が不信感を抱いて辞めてしまう。
→ 回避策:早めに丁寧な説明を行い、不安を軽減する。
文化や経営方針のギャップ
買い手と売り手の企業文化が合わず、統合後に摩擦が発生。
→ 回避策:契約前に方針や価値観のすり合わせを徹底する。
✔︎ チェックポイント:企業価値評価の方法/税務対策の有無/従業員への説明タイミング/買い手との文化的相性
法制度・支援制度・ガイドラインの活用

中小M&Aガイドラインの概要と遵守すべきポイント
経済産業省が策定した「中小M&Aガイドライン」は、取引の透明性や公正性を確保するための指針です。報酬体系の明示や利益相反の回避、情報開示の適正など、基本的なルールを定めています。ガイドラインに準拠した専門家や仲介会社を選ぶことは、トラブル防止と安心の第一歩です。
✔︎ チェックポイント:契約条件の明示/利益相反の管理/情報開示のルール
補助金・助成金制度(事業承継・引き継ぎ支援など)
国や自治体は、事業承継を円滑に進めるための補助金・助成金を用意しています。代表例が「事業承継・引継ぎ補助金」で、承継に伴う設備投資や販路開拓などの費用を支援する制度です。費用負担を軽減できるため、検討初期から情報収集を行うのが望ましいでしょう。
✔︎ チェックポイント:事業承継・引継ぎ補助金の対象経費/公募時期・採択率/申請に必要な書類
税制優遇措置・相続・贈与の制度
承継においては相続税や贈与税の負担が大きな壁となります。そこで活用できるのが「事業承継税制」です。一定の条件を満たせば、株式の贈与・相続にかかる税負担が大幅に軽減されます。ただし適用には事前の計画と手続きが必須です。
✔︎ チェックポイント:事業承継税制の適用要件/手続き期限/株式評価の方法
支援機関紹介(国・地方自治体・専門家・仲介業者含む)
事業承継は一人で進めるものではありません。国の「事業承継・引継ぎ支援センター」、商工会議所、地方自治体の専門窓口など、公的支援機関が用意されています。加えて、税理士・弁護士・会計士・M&A仲介業者などの民間専門家を組み合わせることで、より実効性のある承継が可能になります。
✔︎ チェックポイント:公的支援センターの活用有無/商工会議所・自治体の制度確認/専門家チームの体制
引き継ぎ後のフォローアップと持続発展のために
組織・業務統合後の文化・価値観のケア
承継後に最も見落とされがちなのが、企業文化や価値観の違いです。経営方針や働き方にギャップがあると、組織の一体感を損なう恐れがあります。理念の共有やコミュニケーションの場を設け、文化的な摩擦を最小限に抑えることが重要です。
✔︎ チェックポイント:理念・ビジョンの共有会/新旧経営陣の対話機会/業務ルールのすり合わせ
従業員とのコミュニケーション/モチベーション維持
承継後、従業員は「自分たちの立場はどうなるのか」と不安を抱きやすいものです。経営方針や処遇を明確に伝えることで安心感を与え、前向きに働ける環境をつくることが欠かせません。
✔︎ チェックポイント:定期的な全体説明会/評価制度や待遇の継続確認/従業員の声を吸い上げる仕組み
ブランド・顧客の信頼維持や拡大戦略
長年築いたブランドや顧客との信頼関係は、承継後の大切な資産です。取引先や顧客に対して「変わらず事業を続ける」というメッセージを早期に発信し、信頼を維持することが必要です。同時に、新しい経営資源を活かして販路拡大や商品開発に取り組むことで、さらなる成長も目指せます。
✔︎ チェックポイント:主要顧客への承継報告/ブランド利用・商標管理の確認/新規事業・販路拡大の計画
無形資産を活かすための戦略(R&D・技術・ノウハウ等)
承継後の企業価値は、財務だけでなく無形資産の活用にかかっています。研究開発(R&D)、技術力、社員が持つノウハウなどを体系化し、新しい商品やサービスに生かすことで、持続的な競争優位を築けます。
✔︎ チェックポイント:技術・ノウハウのマニュアル化/知的財産の保護/研究開発体制の強化
定期見直し・フィードバックサイクル
承継はゴールではなくスタートです。引き継ぎ後も定期的に進捗を確認し、課題を洗い出しながら改善していく「フィードバックサイクル」を回すことが不可欠です。経営計画のモニタリングや専門家による定期診断を活用するのも有効です。
✔︎ チェックポイント:承継後1年以内の振り返り/定期的な経営計画レビュー/専門家の伴走支援の継続
まとめ
事業承継やM&Aは、単なる経営者の交代ではなく「会社の未来をどう描くか」という大きな経営課題です。早期の準備、透明性のある情報整理、関係者との信頼関係づくり、そして専門家の力を借りることが、成功への近道となります。
しかし、財務・税務・法務・人材・文化、整理すべきことは多岐にわたり、経営者が一人で抱えるにはあまりにも複雑です。そのため、多くの企業が「もっと早く準備しておけばよかった」と口にします。
MGS税理士法人では、税務・会計の専門性に加え、経営財務・事業承継・M&A支援をワンストップで提供しています。中小M&Aガイドラインの遵守を徹底し、経営者とご家族、従業員、取引先すべての安心を第一に考えながら、最適な承継の形を共に設計いたします。
「まだ先のこと」と思う今こそが、準備の始めどきです。会社の未来を守るために、今何ができるだろうと考えている方は、まずはお気軽にMGS税理士法人へご相談ください。
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事業承継に関する、ご相談はMGS税理士事務所まで、お気軽にお問い合わせください。
